Subrow’s Blog

エンジニアとしてのキャリアをベースに「ものづくり」の昔と今、そして未来予想図をこのブログを通じて創っていきます

改めてコロナ禍によって見えてきた日本の「ものづくり」が向かうべき方向性 2

もともと日本は、世界でも有数の「仕事が好きではない人」の割合が高い国である。またその一方で転職率は世界でも有数の低さという、世界的に見ると何とも不思議な国でもある。

ということは、多くの人が好きでもない仕事をやりながらも転職せず、ひたすら我慢して日々会社勤めしていることになる。如何にも日本らしい話ではあるのだが。

これはあくまで幅広く業種を網羅した統計であって、製造業に限った話ではないので、日本のあらゆる業種にこういう思いで日々仕事をしている人たちがたくさんいることを表しているのだが、結局は、事あるごとに取り上げられる日本企業における低生産性の最大の原因ではないかと思ってしまう。

もちろんそれは読者の皆さんもお判りの通り、年功序列、終身雇用という日本独得の制度が大きく影響しているのであって、雇用する側もされる側もなかなかその呪縛から抜け出せないでいるのだ。

私自身もご多分に漏れず、長年そのような呪縛の中で生きてきたし、数えきれないくらい理不尽で納得のいかない状況に遭遇してきた。仕事だから、給料もらってるから、と割り切らざるを得ない状態で、楽しくない仕事を続けてきた人が多いのは事実だ。日本社会ではそれがある意味常識だったし、今となっては、ある種の洗脳だったような気もする。

しかし私はもともと”あまのじゃく”だったこともあり、いつの頃からかその洗脳から解き放たれ、そもそも楽しくないことを無理やりやって良い成果が出ることなんてあり得ない、と思うようになった。
そのキッカケが何だったかはよく覚えていないが、随分と気持ちが楽になり始めたのは覚えている。

一方では、そうした主張や行動をし始めると組織からは冷遇され疎外されていくことが増えていったのだが、それはそれとして、エンジニアとしてのポリシーをしっかりと見つめ直す機会になったように感じるし、特に後悔はしていない。

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さて、ここでエンジニアや職工の人たちに一つの問いを投げたい。

「”仕事(プロセス)が楽しくない”と感じていて、”イノベーション”は生まれるだろうか?」

私の答えは”No”だ。

ほとんどの人は、職業として志すくらいだから当然「ものづくり」が好きであり、楽しんで取り組んでこそ持てるポテンシャルを存分に発揮出来ると私は思う。

私自身の経験から、自分の創造したアイデアが試行錯誤を繰り返しながら実現していくプロセスがあり、そして成果物として出来上がる、それがエンジニアとっての楽しさであり醍醐味だ。たとえ、携わったものが大きな装置の中の小さな部品一個であっても、そう感じるものだ。

しかし今や、組織の中の「ものづくり」は制約や束縛があまりに多く、自由な発想を発揮して仕事が出来るところはどんどん少なくなっている。前回書いた「コスト」や「効率」ばかり追求しなければいけないのは、その典型例だ。

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私が若かった頃は、少なくとも現在ほどの強い制約や束縛はなかったように思うし、今よりも随分自由な発想でいろんな人と意見を戦わせたりしたものだ。

そう思うと、組織に入って以降、この制約だらけの時代しか知らない、というかそれが当たり前と思って働いている若い世代のエンジニアや職工の人たちを不憫に思うし、潜在的なポテンシャルを活かせずにいる境遇が非常に勿体なく感じる

本当は「ものづくり」が好きでエンジニアや職工を志したはずなのに、組織で仕事をするうちにいつの間にか「やらされ感」に支配され、楽しくなくなっている人も多いだろう。

すなわちそれが、冒頭に書いた世界でも有数の「仕事が好きではない人」の割合が高い国が形成されてしまう大きな要因ではないだろうか。

私は、楽しく仕事をすることで生み出されるイノベーションは無限にあると思うのだが、しかし今の日本には、少なくとも製造業という組織には残念ながらその土壌に乏しいと言わざるを得ない。そうかと言って、その土壌が簡単に変えられるものでもないも確かだ。

であれば、企業という組織から離れたところで、若い世代のエンジニアや職工の人たちが自由に楽しく「ものづくり」を語り合い、イノベーションにチャレンジし生み出だせる場や環境を作るべきはないか、というのが私の意見であり、これからの日本の「ものづくり」が向かうべき方向だと思う。