Subrow’s Blog

エンジニアとしてのキャリアをベースに「ものづくり」の昔と今、そして未来予想図をこのブログを通じて創っていきます

今まで世界を席巻してきた日本の「ものづくり」が衰退した理由からポスト新型コロナ禍にやるべきことを考えてみた

新型コロナウィルスが世界中に猛威を振るっていて、まったく収束の糸口すら見えない。
もはや、治療薬やワクチンの開発か、免疫を獲得した人が大多数を占めるに至るかしか、望みはないのかもしれない。となるとまだまだ時間は掛かるし、それまでの間はウィルスと経済疲弊の両方との闘いであるのは間違いないだろう。

そして人類がこのウィルスを乗り越える頃には、今の世の中に存在する、多くの常識や概念が覆されているかもしれない。それは不確定要素ばかりの時代がしばらく続くことを覚悟しないといけないということだろう。

日本の戦後経済において「ものづくり」が成長の原動力だったのは誰もが知るところだ。
日本人の知恵の豊富さと手先の器用さときめ細かい気配りが散りばめられた「ものづくり」の、その秀逸さで世界中を席巻し、遂には貿易摩擦まで生んだしまった時代が懐かしいくらいになってしまった。

しかし今となっては日本の「ものづくり」は衰退の一途だ。
そしてそれに代わって、安倍政権以降は「インバウンドビジネス」の拡大方針を明確に打ち出し、日本の主たる産業となってきた。

日本には、外国の人々を魅了させる歴史や文化に裏打ちされた豊かな観光資源があるのは確かだし、その中心地である京都に住む立場として、私はその政策を否定するつもりは毛頭ない。しかし時代を遡ってみると、これが正しい姿とは到底思えないし、ある意味、国の無策が招いた妥協の産物とも思える。

では何故、妥協の産物だと私が考えるのかについて具体的に述べてみたい

日本の「ものづくり」に最も活気があり隆盛を極めたのは、間違いなく高度経済成長期であった。
それによって人口も、収入も、右肩上がりに増えた時代であり、終戦後のどん底を味わった日本人が一転して豊かさを謳歌出来た時代だった。

地方の中高卒者を工場労働者として大量雇用し、彼らによって大量生産された製品が、彼らによって大量消費されるという好循環によって経済成長し「一億総中流」を築き上げたのだ。

しかしそれは同時に、製造業の高コスト体質を醸成していくことになった。もちろんその陰には日本特有の年功序列、終身雇用も大きく関係しているのだが。

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その様子が明らかに変わり始めたのは90年代に差し掛かる頃からだ。
人件費を主としたコスト上昇が経営課題として重くのしかかり始めたことから、生産拠点を国内から海外に移す企業が急激に増えていったのだ。

これが日本の「ものづくり」にとって大きな転換点の一つとなった。
まず生産拠点が減ると、当然の如く工場(現場)で「ものづくり」に携わる、すなわちブルーカラーと呼ばれる人々の雇用が減少する。

今となってはブルーカラーと聞けば、労働者の中で下位のヒエラルキーに捉える人も少なからずいると思うが、実はこの人々が日本の「ものづくり」の発展を支え、また多くの優秀な人材を輩出してきたのだ。

日本が世界に誇る継続的な品質改善活動などは、まさしく現場力が生み出したものであったのだが、結果的にそうした人々が活躍する場を奪ってしまったことで、日本の「ものづくり」は衰退を決定づけることになったのだ。

そして製造業に代わる高卒者の受け皿として全国各地に大学が乱立されていき、大卒の看板を携えたホワイトカラー志望の学生が増えたことと、サービス業が中心となる「インバウンドビジネス」の拡大方針も相まって、うまく転換出来ていたように見えていたのだが、、、この新型コロナ禍が来襲するまでは。

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そもそも私から言わせると「インバウンドビジネス」は、ただ単に今あるものを活用しただけであって、何か新しい価値を生み出したものではない

今まさしく、外国人観光客をアテにしたこのビジネスの脆さが露呈している格好だし、関連の事業者はこの状況では何の打ち手もないのが現実だろう。言い換えると「インバウンドビジネス」は、観光資源に依存した他力本願の部分が大きく、根っこが何もないビジネスだったのだ。

本来は「ものづくり」の衰退に代わって、何か核となる産業の創出を官民挙げて取り組むべきだったのだが、その中心に「インバウンドビジネス」を据えてしまったことが、妥協の産物だと私が思う理由だ。

一方でアメリカでは、70年代からポスト自動車、ポスト家電を見据えて、シリコンバレーを中心に半導体や情報通信技術の研究開発が着実に進められており、その結果としてマイクロソフトGAFAなどを中心に第4次産業革命において世界を主導出来る立ち位置にあるのである。

新たに核となる産業を育てるためには官民挙げての優秀な人材確保と並々ならぬ努力が必要なのはどこも同じであるが、それが出来たアメリカと出来なかった日本、この期に及んでアメリカの後を追い掛けても追いつけるはずもなく、この30年以上のギャップを埋めることは不可能だと断言せざるを得ない。

ただ、今回の新型コロナ禍で、世界はこれからも相当なダメージを受け続けると想定される中、不謹慎ではあるが、大きなチャンスが訪れるかもしれないとの期待感が、私には少なからずある。

衰退してしまった日本の「ものづくり」を復活させるには、今までと同じことをやっていてはいけないのであって、今こそ、エンジニアや職人が持つ、斬新な発想と創造力を集結してチャレンジングな場を作っていければと思う。