Subrow’s Blog

エンジニアとしてのキャリアをベースに「ものづくり」の昔と今、そして未来予想図をこのブログを通じて創っていきます

「ものづくり」の原点となっている二つの欲求とは

今の時代においては「ものづくり」との云う言葉の定義はものすごく広くて複雑だ。
故に非常に曖昧な言葉であるとも言える。

私の考える「ものづくり」の原点は生きるための道具作りだ。
それは旧石器時代から、その時代や環境に合わせて受け継がれてきたアイデアと知恵の結晶に他ならない。もちろん18世紀の産業革命によって大きく進化、拡大するのだが、その根本にあるのはたった二つの欲求であると思っている。

まず一つ目は、使用者目線での便利な暮らしにしたいという欲求に基づいた「ものづくり」の進化だ。
これは人間として誰もが持っている欲求であり、少しでも便利に暮らしたいにしたいと皆思ってきたのだ。

話は大きくさかのぼるが、先史において石器から青銅器、そして鉄器に進化してきたことが典型的な例だ。先史時代における鉄は、まさにエポックメイキングな素材であったはずである。
そこに至るには、加工し難くくもろい石器や、素材供給が安定せず品質にバラツキが大きかった青銅器の、それぞれの不便さや欠点を解消するために、鉄の精錬技術開発に尽力した先人たちの努力があったのは間違いない。云うまでもなく鉄は、現代においても広く使われているし、その鉄をベースに鋳鉄や鋼やステンレスなどが開発され用途によって使い分けられるようになったのは、まさしく便利に暮らすための知恵が作り出した進化なのだ。

そしてもう一つは、作り手目線での良いものを作りたい欲求に基づいた進化だ。
人が欲しがるもの、便利だと思うものを作って提供する、これはビジネスの原点だ。これは今も昔も、どんな分野でも変わらない。だからこそ他人に出来ないことをやろうとして知恵を出し、工夫を重ね、特殊な技術を習得しよう努力し、差別化を図ろうとする、その思いが技術の進歩を支えてきた。そしてその心意気が「職人」というプロフェッショナルを育成し、継承させ、そこで得られる信念とプライドが「ものづくり」を進化させてきたのだ。

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しかし、先史時代以降長らく続いてきたこの2つの欲求に基づく「ものづくり」の進化は、第4次産業革命の拡大によって必ずしも当てはまらない時代になってきていると考えている。細かい話は追々このブログで書いていきたいと思うが、あらゆる意味で多様化が急速に広がっている現代においては、便利と感じる感覚も多様化しているし、便利になり過ぎることを否定する人たちまで出てきているのだ。

18世紀の産業革命以降、ひたすら便利と効率を追い求めて成長してきた「ものづくり」は、まさしく岐路に立っていると云っても過言ではない。しかし一方で、人が生きていくうえで「ものづくり」がなくなることもない。

そのような観点で考えたとき、今後の「ものづくり」はどういう方向に向かうのか、作り手側はどういう姿勢で「ものづくり」に向き合うべきなのか、について、将来を担う職人の方と一緒に「未来予想図」を描いていきたいと私は思っている。