Subrow’s Blog

エンジニアとしてのキャリアをベースに「ものづくり」の昔と今、そして未来予想図をこのブログを通じて創っていきます

2020年を迎えて、あらためて今後の「ものづくり」について考えたい

f:id:Subrow:20200104103715j:plain

平成から令和に元号が変わり8か月、2020年が明けた。
その間、新天皇御即位の慶祝ムードに包まれ、さらには東京オリンピック開催のお祭り気分をマスコミが煽る中、消費税率が8%から10%に上がって国内の消費動向が明らかに冷え込んできている。

顕著なところでは、10月の国内自動車販売は前年同月比20%近い減少、11月の工作機械受注に至っては40%近い減少になっている。政府は一時的な落ち込みと楽観視しているようだが、いくつかの業界の方にお話しを聞くと、国内需要だけでなく輸出も下落している現状からは、今後の見通しも非常に厳しいと云う話が多く聞かれる。もっとも日本人の性質上「ウチの会社は前途洋洋です」みたいな話が聞けるはずもないのだが。

その見通しが正しければ、「ものづくり」が今後大きな変化の渦に巻き込まれるのは間違いない。

ご承知の通り、18世紀の産業革命以降「大量生産、大量消費」によって経済的に発展し、豊かさを手に入れ、便利な暮らしが当たり前になった。あらゆるものが簡単に手に入り、消費出来る時代を我々は生きてきた。そして「ものづくり」企業がその暮らしを支えてきた。

しかしもうそんな時代は過去のものになりつつある。

今のままでは日本は毎年1%ずつ人口が減少していき消費は自ずと減っていく。さらに所得増が見込めない中での消費増税で消費者のマインドは冷え込み続け、ものを買わなくなる。さらにあらゆる分野でシェアリングが拡大していき、クルマを筆頭に個人で保有する必要のないものが増加してそれに拍車をかける。

それらの結果、「ものづくり」が衰退していくのも必然だ。

現状の日本国内は、まだまだ「大量生産、大量消費」が前提の仕組みが幅を利かせている。工場も、流通も、そして多くの「ものづくり」企業のマインドも、安価で大量に作って製造単価を下げ、薄利多売で利益を出す、という構造が主流だ。

しかしそれは結果的に低賃金労働者を増やすことに繋がり、裏を返せば彼らの消費者としての購買余力を下げ、安いものしか買えない人を増やし、また安いものを提供するためにコストを下げる、という悪循環を生み出してきたに過ぎない。

もっともこの構造は、今となっては「ものづくり」だけではなく、日本全体に根深く巣食う非常に深刻な病巣であるのだが。

あのトヨタでさえ、経営者が社員に対して繰り返し危機感を共有し事業構造転換を唱えても、多くの社員のマインドは容易には変わらないと聞く。

しかし大手企業の下請けで、際限なくコスト低減を要求される中小零細の「ものづくり」企業では、経営者ですらそんな方向に目線を向けられない現実があり、当然そこにいる社員は推して知るべしだ。

それぞれがそれぞれの立場や環境での思いはあるだろうが、過当競争によって安価で提供することを最優先として尽力し過ぎた功罪が、ブラック企業なる極めて残念なワードを生み、これほどに日本を疲弊させ没落の危機に直面させてきているのだ。

もちろん長年に亘ってこの構造を容認し、また時には推進してきた政府や経団連の責任は大きいであろう。

しかし私は、伝統工芸などの手仕事も含めた「ものづくり」に思い入れのある身として、政治や経団連の話はさておき「ものづくり」の本質の部分で微力ながら変革の一助になれればと考え、今後も私自身の思いを発信し活動していきたい、と2020年の年始を迎え改めて思っている。