Subrow’s Blog

エンジニアとしてのキャリアをベースに「ものづくり」の昔と今、そして未来予想図をこのブログを通じて創っていきます

ものづくりにおいて製品安全に関わるリスクとコストをどう考えるか

私は以前、製造物責任に関わる業務を経験したことがある。
最近巷ではあまり耳にしなくなったが、いわゆるPL法などに関連する案件や事項を取りまとめ、市場での製品リスクの回避、軽減を図るための部門だ。

f:id:Subrow:20191117170738j:plain

電子レンジで猫を乾かす?

私も真偽のほどはよく知らないのでその点はご了承いただきたいが「愛猫を洗ったあとドライヤーで乾かすのが面倒だったので、電子レンジに入れて乾かしたら死んでしまった」という損害賠償訴訟が米国で起こったというジョークのような逸話があるのをご存じだろうか。

原告の言い分は「電子レンジの取扱説明書に”猫を乾かしてはいけない”とは書いてないではないか」というものだったようだが、常識的に考えて、電子レンジの使い方として正しいものでないのはお判りだと思う。しかし、世のなかにはいろいろな人がいるもので、メーカーの想像もしていない使い方をされ、それが原因で事故や故障が起こる場合が結構あるのだ。

もちろんメーカーは、目的外使用や改造が原因のトラブルと特定されるものには、基本的に保証もしないし賠償に応じることもない。ただしそれは、その内容が適切に取扱説明書に書かれているか、または製品に貼り付けたラベルなどで告知してあるか、など、何らかの注意喚起がされていることが大前提になるなのだ。

マクドナルドが60万ドル支払い

過去には膝にコーヒーをこぼして火傷した人が、熱すぎる商品を注意喚起もなく提供したマクドナルドを相手に訴訟を起こし、60万ドルもの賠償金が支払われたのは有名な話だ。それがキッカケとなり飲食店はこぞって、商品提供時には「熱いのでお気をつけ下さい」との注意喚起を添えるようになり、またカップやパッケージにもハッキリと表示するようになったのだ。

米国は訴訟社会とよく言われ、一つ間違えば莫大な賠償金の支払いが突きつけられるし、その分野で腕の立つ弁護士がたくさんいる。だから米国に製品を輸出し販売している企業は製造物責任に神経質にならざるを得ない。そして今や、米国だけでなくその他の国でも同じようなリスクに配慮しなければならない状況だ。中には法令や法規がコロコロと変わり安定しない国もあるため、取扱説明書へ記載する内容には細心の注意と配慮が必要だ。大手企業では既にそういった認識も進んでいて取扱説明書などに労力とコストをかけて、極力リスクの少ないものを作る努力がされているようだ。

中小企業や伝統工芸品の抱えるリスク

しかし中小企業の製品や、京都やその他各地で製造、販売されている伝統工芸品などは、私が見る限りかなりリスクが高いように思える。これだけ日本を訪れる外国人観光客が増えているなか、土産物としていろいろなものが製造、販売されているが、文化も常識も異なる外国人にどういう使い方をされるのか、は日本人には全く想像もつかないこともあるだろう。そういう観点でみると、外国人観光客が購入して自国に持ち帰る製品を製造、販売している時点で、リスクはゴロゴロころがっていると考えるべきであり、その対策を考えるべき時期にきているのではないかと思う。自社では輸出していないつもりでも、外国人観光客が自国に持って帰れば輸出しているのと同じことなのだから。

確かにそこに注力するにはコストも掛かるし、大手のようなわけにはいかないであろうことは理解できる。しかし、上記のようなリスクがあることは認識しておくべきと思う。ひとたび訴訟に巻き込まれたら、下手をすると会社が吹っ飛ぶくらいの賠償金が請求されてくる可能性があるのだ。

何か、半ば脅しのような書き方になってしまい大変恐縮なのだが、今まで何もないからこれからもない、という保証はどこにもない。いわゆる「正常性バイアス」が邪魔をして対応が進まないのであればそれは非常に残念だし、一度自社の製品を改めて見直される機会を持たれたほうがよいと思うし、多少のコストは保険と思って割り切るくらいの意識が必要と思う。私でアドバイス出来ることがあれば、させて頂くので。